■ 「近・現代文学研究会」 第102回(2008年7月) ■ |
加賀乙彦 『帰らざる夏』 | ||
第102回「近・現代文学研究会」は、七月十日、日本民主主義文学会の会議室で行われました。今回は加賀乙彦の『帰らざる夏』で、報告者は柏木和子氏。参加者は報告者を含めて十二名でした。 柏木氏は、資料とレジュメを用意されて、一時間以上にわたって報告されました。 資料は、この作品が第九回谷崎潤一郎賞を受賞した時の作者の「受賞の言葉」(『中央公論』に掲載)や、作者の年譜や、「しんぶん赤旗」のインタビューのコピー等です。 レジュメの内容は次のとおりです。 @小説「帰らざる夏」の大要について A「帰らざる夏」で作者が提起したこと B天皇および天皇制について・敗戦直後の他の自害と「帰らざる夏」の自害 C三島事件との関連について D加賀乙彦は、なぜ「帰らざる夏」を書いたか E「帰らざる夏」以降の加賀乙彦の生き方と作品 Fその他 柏木氏は、陸軍幼年学校における皇国思想教育とその生活を、敗戦による天皇への抗議の「自害」に至るまでつぶさに描いた、この千四十枚もの長編を、報告のために「何度も読んだ」、「すごい小説だ」と感想を述べられました。 参加者のなかからは、作品を読んで「感動した」、「とても面白かった」という感想が、主に女性の参加者の中から出されました。しかし、「読むのが辛かった」、「読むのが苦痛だった」という感想も、主に男性の参加者の中から出されました。 とにかく柏木和子氏の、熱のこもった報告に圧倒された研究会でした。 |
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(井上通泰) |