■ 「近・現代文学研究会」 第99回(2008年1月) ■ |
木下順二 『沖縄』 | ||
第九十九回「近・現代文学研究会」は、一月十七日、日本民主主義文学会の会議室で行われました。今回は木下順二の「沖縄」で、参加者は十二名。報告者は松木新氏で、札幌から来ていただきました。
松木氏は三点の資料(@レジュメ、A藤島宇内の「日本の三つの原罪」、B一九六一年七月号『群像』初出の「沖縄」)を用意され、報告されました。 「沖縄」は、「沖縄本島から西南数百キロの小さな島」で、「敗戦から十五年目の夏」の、夕方から翌日の朝までの時間を設定し、当時の沖縄の問題を集約して描いた戯曲である。この戯曲の中では、戦争中、沖縄の学生を斬った元帝国陸軍軍曹と、学生の恋人だったらしい女性が死ぬ。 松木氏はこの戯曲のメーンテーマは「どうしてもとり返しのつかないことを、どうしてもとり返すために」というところにあり、二人が死ぬことで、新しい連帯が生まれてくるという発想がある、と報告されました。 また松木氏は、丸山真男の(二人の死は)「自己否定による人間回復」、「これぞマルクス主義の真髄を表したもの」という、丸山真男の「点の軌跡―『沖縄』観劇所感―」からの感想も紹介されました。 参加者の中から、「この戯曲は難しい」という感想や、(木下順二という人は)「単純なことを難しく考える人だなあ」という感想や、「どうしてもとり返しのつかないことを、どうしてもとり返すために」、何故、二人の人間が死ななければならないのか、解らない、といった感想も出されました。 最後に、松木氏は「木下順二の中にも、安保(闘争)の挫折感があったのかもしれない」という感想をもらされました。 |
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(井上通泰) |