『文学運動の歴史と理論』のシンポジウムが十月三十日東京労働会館で開催された。出席者は二十三人、三人のパネリストと報告テーマは以下のとおり。
@乙部宗徳氏〈民主主義文学─戦後の出発から文学同盟の創立まで〉
A新船海三郎氏〈「民主主義文学とは何か」をめぐる第九回大会の「定式化」と第二十回大会の規約改正〉
B北村隆志氏〈文学同盟初期方針の発展の弁証法〉
それぞれ重要なテーマではあるが、ここでは私が一番興味をもっていたAのテーマを中心にふれる。
第九回大会(一九八一年)では「民主主義文学とは、要約していえば、さまざまな対象を社会の民主的発展の方向めざしてリアルにえがく文学である」とされた。この背景について、一九七〇年代後半から八〇年代にかけて「戦後第二の反動攻勢」とよばれた時期に、政治と文学の関係をめぐって民主主義文学とは何かをより明確にする必要があった。この「定式化」は積極的な意義をもったが、一方でこの理解をめぐっていろいろな揺れが生じ、それが解決されずに来ていた。そこにはより根本的には当時の文学同盟の性格規定「民族の独立と平和と民主主義のためにたたかう作家・評論家の団体」によるものだった。第二十回大会での名称・規約改正で今日的な性格規定へと発展させたが、それにふさわしい新しい民主主義文学の定式化が求められている。というのが、新船報告の私流の理解である。
「いまの民主主義文学には基準はないのか」、「九回大会の定式化の見直しは唐突観があった。なぜ、大会報告で書かれていないのか」などいろいろな意見がでたが、あらためて民主主義文学とは何か、とりわけ批評の基準問題として問われてくる問題であることが明らかになった。今後「批評を考える会」で引き続き深めていくこととなった。
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