若い世代の文学カフェ

◆ 若い世代の文学カフェ in 代々木 ◆
2017年3月25日(土)

 岩崎明日香さんの小説『角煮とマルクス』『十九時の夜明け』を取り上げ、若い世代の文学カフェを代々木で行いました。10代の女子大生から20代30代の若い人を中心に27名が集まり、作品を巡って熱いトークを交わしました。文芸評論家の谷本諭さんが作品を紹介、司会は文芸評論家の久野通広さんが務めました。

 日本民主主義文学会、2016年度の新人賞受賞作である『角煮とマルクス』では、作者自身の体験を見事に小説に昇華した作品であると高く評価された一方、タイトルの『角煮とマルクス』については、作品と結びつかないという意見も。一見、関係ないような言葉の羅列に見えて、“角煮”は家族を“マルクス”は社会変革という二つの主題を表しているとの意見が出され、タイトルに込められた作者の意図が分かりました。作者の岩崎明日香さんは、自身の体験は様々なところで何度も語り尽くしてきたが、小説の形にすることで初めて文章に表現することができたと話しました。

 新人賞受賞後第1作となる『十九時の夜明け』は、自身の体験から離れモデルの女性を取材し、非正規労働や女性労働者の問題を取り上げた作品。アルバイト先の居酒屋でセクハラをされ女性問題を考えさせる小説の前半部分と、原発問題で抗議行動に向かう後半の部分とがうまくつながっていないという意見が出されました。体験でなく取材で小説を書く事は決して簡単ではないが、ぜひ取材を通して小説にしてほしいとの要望も。作者は、「都議会での女性議員に対するヤジに非常に腹が立ったことがこの作品を書くきっかけとなった」「女性労働者の問題を最後まで追求できなかったことは心残り」と語りました。

 ブラック企業の問題を調査するなかで、岩崎明日香さんのことを知り、文学カフェに参加して下さった若い方や、文学会のホームページから文学カフェの開催を知り参加して下さった方など、文学や作品を通じてこれまで文学会とのつながりのなかった方々と交流ができたことを大変うれしく思いました。
 (橘 あおい) 
 

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