若い世代の文学カフェ

◆ 若い世代の文学カフェ in 松山 ◆

 愛媛県初の若い世代の文学カフェは十月十九日、松山市内のカフェ「晴れときどき…」を借り切り、支部の会員四名、三十〜四十代の参加者六名、報告者の橘あおい氏の計十一名で開催した。
 日頃小説を読む機会の少ない人でも、事前購読等の負担なく参加してもらえるよう、今回は合評ではなく朗読による作品鑑賞を試みた。
 紹介した作品は、須藤みゆき「はじまりの日」と、橘あおい「黒いぶち猫の絵」の二作品。朗読に続き、結末を伏せた形で各作品の報告、その後、参加者に発言してもらうという内容で進行した。
 最初に朗読した「はじまりの日」には、主人公が何故この夫と結婚したか、また何故離婚しないのかという点について、様々な意見・感想が述べられ、主人公は幸せなのか、人の幸せとは何か、といった発言もあった。また作中の夫の台詞や比喩表現について発言が多くあり、印象に残る表現であったと思われた。
 続いて「黒いぶち猫の絵」について、高齢者の貧困と貧困ビジネスの横行など社会問題に対する発言、モンスターペイシェントと呼ばれるような対応の難しい人には、どう寄り添うことが出来るのか、といった問題提起があった。また、人間らしい生活とはどういうことかと、作中人物の人生を見つめる発言もあった。
 いずれの作品に対しても、鑑賞を通じて参加者の実体験や価値観、問題意識などを共有することができた。
 朗読による鑑賞は初めての試みであったが、普段小説に親しむ機会が少ないという参加者が多いなかで、未読部分を想像し、自身の体験に結びつけ発言してもらうことができた。朗読は一部であったことから、未読部分への興味を持ってもらえるなど、文学に親しむ機会を提供できた。
 最後に橘氏より、個々の体験から「こんなのは違う」「実際はこうなのに」と訴えたいこと、伝えたいことがあるならば、ぜひ表現してほしいという呼びかけのもと、民主文学誌の紹介と入会の案内があった。
 会終了後、参加者のうち一名が支部へ入会した。
 (成田富月) 
 

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