これまで   8回以降の目次
 


〔第1回〕  「稲の旋律」の作者と語りあう Tea time

 『しんぶん赤旗』連載中から話題の作品であった「稲の旋律」をめぐって、作者である旭爪あかねさんと、挿絵を担当された画家の首藤順一さんとの対談をしました。聞き手は評論家の岩渕剛さん。トークのあと、参加した人からの質問、意見などについて語り合いました。(2002年4月14日)


〔第2回〕  とおい戦争、ちかい戦争

 アフガニスタンやイラクをめぐって、アメリカの戦争がしかけられる時代に、文学は何ができるのか、何をすればいいのか。そうした問題から、作家の能島龍三さん、ジャーナリストの浅尾大輔さん、評論家の須沢知花さんの三人をパネリストにして、語り合いました。戦争を直接体験しない世代が、どのように戦争とむきあっていくのかという点が、話題となりました。(2002年10月6日) 


〔第3回〕  社会のなかの私をえがく〜70年代、そして今

 『女性のひろば』に「海蝕台地」を連載した風見梢太郎さん、『しんぶん赤旗』に「ルック・アップ」を連載した渥美二郎さんをゲストに、小説を書くことと人生との関係について、熱い議論が交わされました。
 聞き手は評論家の須沢知花さん。社会の矛盾を実感しながら、その中で小説を書くことの意味について、作家のなまなましい経験が語られました。(2003年6月8日)  

 

〔第4回〕  芝居が生まれる瞬間(とき)

 東京芸術座が『稲の旋律』を上演しました。その脚本・演出を手がけた、劇作家の平石耕一さんを招き、作家の亀岡聰さんが聞き手となって、劇作と小説とのちがい、演劇の立場からみる現実のありよう、演出の実際などをめぐって語り合いました。『稲の旋律』上演のときの奈緒役を演じた俳優の佐藤アズサさんも参加して、上演や稽古の実際の姿についての話題も提供されました。(2003年10月5日)


〔第5回〕  「家畜の朝」のリアル、浅尾大輔のリアル

 昨年『新潮新人賞』を小説「家畜の朝」で受賞した、浅尾大輔さんを迎えて、〈「家畜の朝」のリアル、浅尾大輔のリアル〉というタイトルで実施しました。参加者は総勢16名でした。
 司会兼聞き手は、編集者の高橋暁子さん。作品の背景となった作者の故郷の愛知県新城市の話や、そこでの作者の中学・高校時代の話、作品の創作過程のことや、文学を志した経過などについてひとしきり話があり、その後参加者を交えてなごやかに真剣に議論が交わされました。
 作者が影響をうけた過去の文学はなにか。どのような読者を想定しているのか、登場人物のような人は雑誌『新潮』は読まないのではないかという問題提起や、これから書いていきたいこと、また〈文学は自由であるべき〉という作者の発言に対しての質問など、いろいろな話題が出ました。
 ことばによって人はわかりあえるはず、という浅尾さんの発言が、参加したそれぞれに印象をあたえたようです。(2004年4月11日) 


〔第6回〕  「映像・文学・ハンセン病」 ― 『熊笹の遺言』監督、今田哲史さんを迎えて

 第6回目となった〈若い世代の文学カフェ〉は、2004年11月7日、ドキュメンタリー映画『熊笹の遺言』監督の今田哲史さんを迎えて、「映像・文学・ハンセン病」というテーマで文学会事務所で行われた。聞き手は、「こんなに若い人が、ハンセン病という題材を取り上げたことにすごいと思った」という浅尾大輔氏。
 今田監督がハンセン病を目の当たりにした2002年の熊本地裁判決。その原告団のひとり、谺雄二さんが、まるで何かにとりつかれたように訴える姿に、「自分が知らなかった事実に向き合いたい」と思ったことがこの映画を撮る動機となった。特別な手続きもせずアポなしで療養所へ行き、そこで、顔が崩れ指もないおじいさんに出会ったが、正直はじめは見た目の恐ろしさに声もかけられず、ウロウロするばかりだったという。栗生楽泉園で谺さんに会ってから、映画にできる≠ニ確信した。約半年間にわたる撮影でわかったのは、元患者の人たちそれぞれが、それぞれの生き方を持っている、という事だった。そして、自分の内面に向き合う、生きる道を探すため、絵や短歌、小説などの文学に関わっていった。社会から隔離されてきた分「純粋で、とても美しい人たちだ」と今田監督は言う。
 そして、この映画のひとつのエピソードである、浅井あいさんと難病におかされた少年との出会い。浅井さんはこの少年に会うまでは「何かを伝えようと思ったことがなかったが、この子にだけは伝えたいと思った」と今田監督に語ったという。隔離政策や断種手術を強制された元患者たちは、この映画と今田監督を通して私たち若い世代にも何かを伝えてくれたのではないだろうか。  
(高橋暁子)
 

 

〔第7回〕 樋口一葉 その生涯と作品世界

 第7回若い世代の文学カフェは、2005年5月15日、文学会事務所で開かれました。今回は、1月に刊行された『一葉伝――樋口夏子の生涯』(新日本出版社)の著者澤田章子さんを迎えて「樋口一葉 その生涯と作品世界」についてのお話と、東京芸術座の崎田和子さんの「たけくらべ」の朗読でした。参加者は12名。

澤田章子さん  崎田和子さん


 澤田さんははじめに、なぜ五千円札の肖像に一葉が採用されたかについて、彼女が近代文学の先駆的女性作家として文句のつけようのない思想的内容をもっていたからと説明。続いて、明治20年代を生きた一葉の生涯と、代表作「たけくらべ」「十三夜」について述べました。まとめで、一葉文学の意義として(1)反骨と批判精神に支えられたリアリズム文学の先駆。(2)天皇絶対の明治社会で、差別された下層庶民と現実生活とその苦悩を描き、社会矛盾を訴えた。(3)文学活動を通じて、日清戦中・戦後文学に社会性を加える役割を果たしたことの3点を強調しました。参加者からは、「一葉」の名前の由来について、澤田さんが一葉に惹かれたのかなど、の質問が出ました。
 澤田さんは、一葉の研究のきっかけについて、職場結婚で退職をせざるをえなくなったとき「にごりえ」を読んで感動し、涙なしに読めなかったこと。それまで「一葉論」は男性が書いていたが、女性としての共感を出した一葉論を出したかったと答えました。崎田さんの朗読もすばらしく、「文語調でむずかしいと思っていたが、朗読で聞くとリズムがあって非常にわかりやすかった」と、好評でした。
(久野通広)

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