「誰もこの涙に気づかない」 杉山成子 夫の激しい暴力を受け家から逃げ出した映子は、胸の底から嗚咽がこみ上げてきた。なぜこんな理不尽が始まったのか、映子は夫と交際し始めたころのことを振り返った。 「バルハシ湖の黒い太陽」 梓陽子 父親は戦後、カザフスタンに抑留された。父がうわごとで語る辛い体験の真相を知ろうと私は抑留の地を訪れた。 「引き継ぐべきもの」 三富健一郎 ドイツに住んでいる信二は、シーボルト館の館長インゴの自宅に招かれ、妻クラウディア、娘カリンとともに訪れたが……。