「さくらが鳴いた」田本真啓
ぽてぽてと鞠が落ちてくるように神社の石段に現れた子猫は、無職の陽平の足許に擦り寄ってきた。
「きみの瞳の中のぼく」斉藤克己
二歳半の長男が、大きな声で歌いながら帰ってくる。
「Eノート」増田 勝
麻酔から醒め、最初に目に入ってきたのは、白い壁にかけてある時計だった。
「私、行きます」竹之内宏悠
電話がけたたましく鳴った。「はい、川崎合同労組ですが」。孝広は受話器をとり対応した。
「伝言」風見梢太郎
久しぶりに研究所を訪れた私は、「人が足りないので一緒に歌ってくれませんか」と若い指揮者に声をかけられた。
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