■ 2017年9月号 作品紹介 ■ |
「生きる」稲沢潤子 瀬戸内に浮かぶ小島の島民は三十年前から原発問題に翻弄され続けてきた。 「八月のサツキ」高橋英男 夜間診療が終わって程なく玄関の自動ドアの音がして小柄な婦人が待合室に入ってきた。 「夏の木陰は」梅崎萌子 土曜日、アトリエで午後の絵画教室の準備をしていると机の上の電話が鳴った。 「ある老避難者の死」前田新 初秋の陽射しのなかを一台のマイクロバスが高台の特別養護老人ホームに向かってのぼってゆく。 「赤いほっぺ」内田美子 今年もりんごが採れた喜びを元同僚に伝えたいと箱に詰め始めると、辛い記憶が頭をもたげた。 「千晶のさがしもの」川本幹子 知らなすぎる。知らなくても生きていける日本という国に、一年ぶりに千晶は帰ってきた。 「菫の蕾」北嶋節子 もし自分の名前が違う名であればいじめられなかったかもしれないと孫娘は泣きじゃくった。 「廃坑のカナリアよ」馬場雅史 こんな夜中にいったいなんだよ! だが、電話機のインジケーターには「公衆電話」と表示されていた。 |
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