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日本民主主義文学会第31回大会宣言 | |
第三十一回大会は、戦後八十年、日本民主主義文学会の創立六十周年という節目の年に開かれました。大会は分断と対立の激化、暴力と戦争につながっている世界の危機的現状に対して「文学に何ができるのか」を問いかけ、どのように創造・批評を進めていくのか。また、高齢化・生活困難などの影響による組織的危機を乗り越えて民主主義文学運動を次世代にどう継承していくのかをめぐって活発に議論されました。 民主主義文学運動は、戦後八十年の間、一貫して戦争、差別と抑圧に反対し、平和と人権の言葉を紡いできました。世界は今、国際法無視の侵略戦争とジェノサイド、核兵器使用の脅迫、激化する気候変動など人類の存続すら危ぶまれる状況に陥っています。一方で、反戦平和、核兵器廃絶、ジェンダー平等などを求める運動が広がっています。とくに、核兵器禁止条約の締結国・署名国の拡大に取り組み、核兵器の非人道性を世界に訴え続けてきた日本被団協のノーベル平和賞の受賞は日本と世界を励ましました。韓国の軍事弾圧を厳しく告発したハン・ガンのノーベル文学賞受賞も人々の理性の声の広がりと深さを示しています。こういう時代に、現実批判の精神で「社会と人間の真実を描く」ことに注力してきた私たちの文学運動の存在意義も大きくなっています。 一方で、この文学運動を次世代に継承していくうえで、私たちは大きな組織的危機に直面しています。多くの努力にもかかわらず会員・準会員、定期読者は減少し続けています。高齢化による支部活動の困難も深刻です。こうした中で懸命に文学運動を続けている皆さんに敬意を表します。同時に第三十回大会期には、新支部が三つ誕生し、『民主文学』読者に広く呼び掛けて例会・読書会をもつ試みも広がり始めています。十代から四十代までの若い世代が参加している支部が全国に二十支部以上あり、新しい支部活動の発展方向が見えています。さらに支部誌の発行部数も一万三千部を超えており、文学愛好者との結びつきも健在です。こうした創立六十年の蓄積を活かした取り組みをさらに広げ、なにより力のこもった作品を『民主文学』に投稿し、前進の可能性を大きく広げていきましょう。 民主主義文学運動は様々な危機を乗り越えてきました。今回の大会を契機に心ひとつにして、民主主義文学運動を次世代につなげていきましょう。 二〇二五年五月十一日
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