日本民主主義文学会第30回大会宣言

 第三十回大会は、平和が脅かされ、「新たな戦前」とさえ言われる情勢の下で「戦争への道に抗して、文学運動の確かな前進を」めざして開催されました。
 ロシアによるウクライナ侵略戦争は開戦から一年を超えましたが収束は見通せません。ミサイル実験を繰り返す北朝鮮や中国の脅威を口実に、岸田自公政権は憲法を蹂躙し、大軍拡を進めようとしています。統一地方選での改憲勢力の伸長によって困難は増していますが、戦争への動きを阻止するため、憲法を守り立憲主義を擁護する市民と野党の共闘は重要になっています。
民主主義文学は時代と社会を真正面から見据え、日々を懸命に生きる人々を描いてきました。この二年間、戦争をどう後世に語り継ぐかの課題を据え、またウクライナ侵略を過去の戦争に重ね、多くの戦争関連作品が書かれました。さらに老いの問題、労働者の闘い、コロナ禍での暮らしや医療の困難、いまだ復興途上にある東日本大震災など、社会の現実が描かれました。
 政治・社会への関心が希薄であると指摘されてきた日本文学においても、戦争・コロナ禍・ジェンダー差別との闘いを通じ、人間の社会性、人間存在の根幹を問う少なくない成果が生み出されています。特に、きな臭さを増す情勢の中、戦争の歴史を問い直す文学作品がいくつも発表されています。民主主義文学会として、問題意識を共有する作家との共同を広げていくことが求められます。
 民主主義文学における批評は、時代や社会に働きかける文学作品を生み出す重大な役割を担っています。批評においても、戦争とジェンダーが大きなテーマとなりました。作品への批評を通じて、明日の文学はいかにあるべきかに言及することが批評には求められています。
 多くの会員・準会員の努力にもかかわらず、民主主義文学会の組織は前回大会より後退しました。『民主文学』の発行部数は採算ラインの二千八百部を下回り二千五百部台となっています。また会員・準会員の減少と高齢化が進んでおり、創造団体として深刻な問題を抱えています。
 社会と人間の真実を描く民主主義文学の存続のために、『民主文学』の普及だけでなく、書き手である会員・準会員の拡大、とりわけ若い世代を多く迎え入れる必要があります。
 そのために支部例会やさまざまな活動を、学び語り合うことのできる魅力あるものにし、身近で読み応えのある『民主文学』を作りましょう。
 日本文学の民主的発展に貢献する気概を持ち、民主主義文学を次代に引き継ぎ発展させるために全力を尽くします。

二〇二三年五月十四日

日本民主主義文学会第30回大会   

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