日本民主主義文学会第26回大会宣言

 日本民主主義文学会創立50周年の今年は、戦後70年の節目の年にあたります。
 侵略戦争によってアジア諸国に君臨しようとした絶対主義的天皇制と日本軍国主義の野望が砕かれて日本が敗戦を迎えた時、多くの国民は二度と無謀な戦争をしない決意を胸に刻みました。しかし安倍政権はいま、戦争立法を企て、不戦を誓った憲法九条を踏みにじり、日本を再び海外で戦争をする国に変えるという姿勢を示しています。また辺野古の新基地建設やTPP推進、消費税増税、原発再稼働など国民無視の施策が推し進められ、平和と民主主義が根底から覆されようとしています。国民生活に格差と貧困が拡大し、日々を生きるだけで精一杯という人々の中には政情を顧みる余裕さえ奪われている状況も生まれています。
 一方で、そうした動きに抗する様々な分野の国民の闘いが、従来とは違う枠組みや形態を作りながら進んでおり、多くの国民がこの国のありようを真剣に模索しています。最近の国政選挙、地方選挙の結果は、政治の危険な動きと、この国の未来を切り拓こうとする人々が切り結ぶ状況を象徴するものとなりました。
 戦前のプロレタリア文学運動の伝統を受け継ぎ、発展させてきた民主主義文学運動は、人はいかに生きるかを問い、社会と人間の真実を様々にうつしとってきました。私たちもまた、この時代と社会の人々の生き方に向き合い、その声や姿、心の底の思いを文学に掬い取る努力を続けてきました。今大会はその成果を確認するものとなりました。
 2003年の第20回大会において、私たちは会の規約を変え、より多くの文学者と文学愛好者に門戸を開くものになるように、名称も日本民主主義文学同盟から日本民主主義文学会と改めました。それは、創立以来の成果をふまえつつ、時代の変化に対応して、さらに多様な題材・主題・手法に挑み、広範な人々との連帯を企図したものでした。今日の多くの文芸誌が政治問題を避けている状況の中で、時代の危機に真剣に向き合おうとする文学者たちとの連携の条件はますます大きくなっています。会外の文学者たちとの創造・批評をめぐっての対話や共同を進め、日本文学の本来あるべき姿を共に追求していきましょう。
 日本の岐路が迫る重要な時期、社会と人間の真実を捉え描く私たちの文学運動にさらに多くの人を迎え入れ、日本民主主義文学会五十年の運動の成果を基礎に、時代の課題を見すえ、豊かな文学運動を構築することを決意します。

     2015年5月10日
日本民主主義文学会第26回大会   

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