日本民主主義文学会第25回大会宣言

 「3・11」から二年、大震災からの復興も、原発事故の収束も遅々として進まないなか、わたしたちは民主主義文学会の第25回大会を迎えました。
 この間、安倍政権は震災からの復興や、原発ゼロをめざす人びとのねがいをよそに、消費税の増税をたくらみ、原発の再稼動を強行するばかりか外国への原発の輸出も企図しています。そして、「アベノミクス」と称する経済政策によって、格差の拡大の方向に社会を動かそうとして、大手マスメディアとの結託や、円安や株高のような見せかけの〈好景気〉によって、高い支持率をつくりだすことで、あらゆる分野で暴走をはじめています。さらに、改憲手続き要件緩和を突破口に、この国のあり方も全面的に変えようとたくらんでいます。
 しかし一方では、全国各地で取り組まれている原発ゼロをめざすとりくみや、TPP交渉参加に反対する動きが広がり、改憲手続き緩和に反対の世論も高まっているように、現実に屈せずに新しい未来をめざそうとする人びとが、立ち上がりつつあります。
 こういうときにこそ、わたしたちは文学創造を通して、新しい時代をつくるための人びとのいとなみと共に歩んでいきたいと考えます。わたしたちの先輩は、プロレタリア文学運動の時にも、戦後まもなくの民主主義文学運動の時にも、新しい時代をつくろうとして生きる人たちに寄り添い、その生き方を描くことを通して、時代に向き合ってきました。そして、その中で生まれたすぐれた作品は、単にその時代の人びとだけでなく、今のわたしたちにも生きる力を与えるものとなっています。
 今回の大会で、わたしたちはこの二年間の文学創造と日々の活動の成果をふりかえりました。それは、ささやかであったかもしれませんが、「3・11」以後の現実に向き合い、そこに生きる人びとの力になりうるものでした。そこに、文学の未来があるのだと、わたしたちは考えます。そして、この方向をすすめることで、これからの文学運動の担い手となる多くの新しい人たちと結びついていきたいと考えています。
 わたしたちは、創造批評の力量をたかめ、文学運動に参加する人たちの輪を広げていくことで、時代と人間を見据え、文学の明日を切り拓くことを決意します。

 
日本民主主義文学会第25回大会   
 2013年5月12日

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