【声明】

検察幹部の「役職定年」を内閣の判断で延長できるようにする検察庁法改定案に反対する


政府及び与党は、検察庁法改定法案を国家公務員法改正との一括法案とした上で衆議院内閣委員会に付託し、性急に審議を進め、今国会で成立させようとしている。この改定により内閣ないし法務大臣の裁量で検察官の役職延長や勤務延長が行われることになれば、不偏不党を貫いた職務遂行が求められる検察の独立性、政治的中立性が脅かされることとなる。これは法治国家として到底看過できない暴挙である。

 しかも許しがたいことに、国家公務員法改正案と一括法案にして内閣委員会に提出することによって、単独改定であれば本来付託されるべき法務委員会との連合審査も拒否している。これは、先に国会答弁が迷走した森法務大臣への追及を回避するため策を弄したものとしか考えられない。

 政府は、本年一月三十一日の閣議において、二月七日付けで定年退官する予定だった黒川東京高等検察庁検事長について、その勤務を六か月延長する決定を行った。安倍内閣はこの措置につき従来の政府解釈の変更まで行って、検察庁法第二二条の定年退官及びそれを国家公務員法附則第一三条に定める特例とする検察庁法第三二条の二の規定は「年齢」に関するものに限られ、定年延長に関するものは含まれないとして、国家公務員法第八一条の三の適用を「正当化」したのである。

 しかも黒川検事長は元閣僚の政治資金規正法違反や口利き疑惑、森友学園や加計学園などの問題で「安倍政権の守護神」といわれている人物である。この黒川検事長の定年延長の閣議決定につじつまを合わせるために、検察庁法を改定しようとし、さらに検察官の役職定年に例外を設け、内閣が認めるときは、退官年齢も超えて従来の役職のまま勤務させることができるものとすれば、検察官は官邸に従属し、刑事司法の独立が大きく揺るがされることは間違いない。

 新型コロナウイルス感染拡大への対策を審議すべき国会で、こうした重要な法案を強行することに、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグをつけたツイートは、文化人、芸能人も含めて四日間で類似も含めて九百万件に及んでいる。

 絶対主義的天皇制下の治安維持法によって、小林多喜二らの文学者が命を奪われ、獄につながれた歴史を、私たち日本民主主義文学会は忘れることはできない。私たちは憲法の基本原則である三権分立を揺るがす恐れさえあるこの検察庁法改定案に強く反対し、慎重審議を求めるものである。

   2020年5月13日            
 日本民主主義文学会常任幹事会  

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