十月一日、安倍政権は、国民の強い反対と危惧の声を無視して、消費税率を10%に引き上げる大増税を強行した。これは国民の暮らしの悪化も、景気と経済・文化を壊すこともかえりみない世紀の愚行である。
消費税導入から三十一年で、政府が繰り返してきた「社会保障のため」「財政健全化のため」という理由は、ごまかしだということが明確になった。消費税導入後、国と地方の借金は四倍以上に膨張し、社会保障は次々に切り下げられてきた。政府答弁でも所得税・法人税などの直接税と消費税などの間接税の比率(直間比率)が、消費税導入前の「『八対二』から、『六七対三三』になってきた」と認めている。これは、当初から財界・経団連が強く求めてきたことで、大企業は巨額の内部留保を積み上げ、富裕層は資産を増大させた。
消費税は、所得の少ない人ほど重くのしかかり、暮らしに困窮する人々に最も無慈悲に襲いかかる最悪の不公平税制であり、貧困と格差の拡大に追い打ちをかけている。年金生活者は、マクロスライドで年金を減らされた上、消費税の増税により、命を削って、節約せざるを得ない。介護サービスの利用を減らし、病状が悪化するまで、医療機関の受診を控える事態が生じている。
消費税の度重なる増税は、国民の暮らしと景気、中小企業の営業を壊し、日本を“経済成長できない国”にしてしまった。8%増税時の景気への深刻な影響は、データにはっきり現れており、実質消費支出は増税前よりも年二十万円も落ち込み、実質賃金も年十五万円も減少した。一九九七年と二〇一七年の国内総生産(GDP)を比較すると、米国は二・三倍に、フランスは一・八倍に伸びたのに対して、日本は一・.〇二倍と低迷している。
今回、政府は「十二分な景気対策」を行っているとするが、「ポイント還元」や「軽減税率」は現場に混乱とレジの改修など設備投資負担を強いた結果、増税を機に廃業を決断する業者が増加している。
『民主文学』誌も増税により十八円の定価の値上げを余儀なくされた。長く続く出版不況の下での増税は、国民の一層の読書離れを加速させ、日本の文学をさらに衰退に追い込む。
消費税減税こそ、最も有効な景気対策である。財源は四百五十兆円近い内部留保を蓄え、莫大な儲けをあげる大企業や、株で大儲けしている富裕層に応分の負担を求めることで生み出せる。
二度の消費税増税で景気の悪化を招いた経過を見れば、元の5%に戻すのが最大の景気対策である。日本民主主義文学会は消費税率5%への引き下げを強く求める。
2019年12月1日
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