【声明】
日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長の「慰安婦」容認の暴言に抗議し、
発言の撤回と謝罪を求める

 橋下氏は、五月一三日、日本軍の「慰安婦」問題について、戦時下の「慰安婦制度は必要であった」と発言し、沖縄における米兵の「性犯罪防止対策」として風俗業活用の進言を米軍に対して行った。この一連の言動は、国政政党の共同代表ならびに大阪市長という公人の立場にある政治家としての品位を疑う、極めて不適切な暴言と言える。また、日本外国特派員協会の記者会見において、論理のすり替えに終始した姑息な態度は、歴史と真摯に向き合う姿勢の根本的な欠落を露呈したものに他ならない。
 一九九三年、河野官房長官は、「慰安婦」問題について、「当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」、「われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」、との談話を発表した。そして一九九五年には村山首相が、「植民地支配と侵略」を「国策の誤り」とし、「アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たことへの反省とお詫びを談話で述べたように、国としての歴史認識を明らかにしてきた経緯がある。
 これらに対してその後、「慰安所を設けたのは民間であって、旧日本軍は関与しなかった」などと、両談話を見直す企てが繰り返されてきたのは衆知のとおりであり、今回の発言も、意図的に行われたことが十分に窺える。
 橋下氏の行為は、女性の尊厳を深く傷つけ男性をも侮辱するばかりか、人間そのものを冒涜する野蛮極まりないものと言えよう。「慰安婦」問題を個々人の性欲の問題として扱うにとどまらず、残虐で非人間的な戦争の本質を隠蔽し、侵略のための軍隊の美化と戦争の正当化をもくろむ橋下氏の行動は、安倍首相らの狙いと軌を一にしてつながっており、看過できないものである。
 憲法九六条、九条を変え、「日本の軍隊」を海外に送ろうとする「いつか来た道」への策動は、日本国民全体が決して許さないであろう。
 社会と人間の真実を描出する文学創造に携わる私たちは、歴史の逆行を許さない覚悟のもとに、橋下氏の暴言に強く抗議し、「慰安婦」容認発言の全面撤回と謝罪を求めるものである。

   2013年5月31日    
日本民主主義文学会常任幹事会  

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