【声明】

原発からの撤退、すみやかな除染と全面的な賠償を求める

 東日本大震災によって発生した福島第一原子力発電所の事故は、発生後七ヵ月を経過した今でも収束の見通しが立たず、放射能被害も拡大している。緊急時避難準備区域は解除されたものの、依然として夥しい数の人々が自宅に戻れず、少なからぬ家族が離散生活を余儀なくされている。多くの成長期の子どもたちが、放射線量の高い地域での生活を強いられている。また、東北から関東にかけての広範な地域で、農林水産業、商工業、観光業が大打撃を受け、多くの人が収入の道を断たれている。
 こうした状況に対してわたしたちは、国と東京電力の責任による放射能測定ポイントの大幅増設と測定の継続化、及び汚染地域のすみやかな除染、健康被害に関するフォロー、そして被災者がこうむった損害の全面的な賠償を求めるものである。
 そもそも原子力発電は、放射能を完全に閉じ込めること自体が困難であり、使用済み核燃料の処理法も確立されていない、危険で未完成な技術である。それを隠蔽する安全神話のもとで起こった今回の原発事故は、まさに人災である。アメリカの核戦略を受けて、五十四基もの原発建設を推進してきた歴代自民党政府と、電力業界や財界大企業を中心とする原発利益共同体の責任は重大である。
 野田内閣は、このような大事故が引き起こされたにもかかわらず、停止中の原発の再稼動ばかりか原発の輸出すらもくろんでいる。今政治に求められていることは、国策としてきた原発推進政策の根本的な見直しと転換以外にはない。
 わたしたちは、五月に開催した第二十四回大会において、原発からの撤退及び総合的なエネルギー政策の検討を、政府と電力会社に求める決議をあげた。日本列島が地震の活動期に入ったとされる現在、この要求はますますその緊急性と重要性を高めている。わたしたちは今回あらためて、原子力発電からのすみやかな撤退と、自然エネルギーを視野に入れた新しい総合的なエネルギー政策への転換を強く求める。それは、単にエネルギーの転換にとどまらず、経済や社会のあり方を根本から問うものとなるだろう。わたしたちは、その転換にふさわしい人間の生き方と社会のありようを追求し、これからの新しい時代の創造に文学の立場から寄与していきたいと考えるものである。

    2011年10月23日
日本民主主義文学会第二回幹事会  


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