【決議】あらゆる差別・人権侵害と闘おう

 ジャニーズ事務所やフジテレビの性犯罪追及、企業・大学のDEI(多様性・公平性・包摂性)研修拡大など、ジェンダー差別反対の闘いが前進しています。その一方で、ジェンダー平等や性的マイノリティの権利擁護への逆風(バックラッシュ)も激化しました。二〇二三年のLGBT理解増進法は、保守派の反対で「差別禁止」から「理解増進」に弱められ、二〇二五年も夫婦別姓法案は提出されず、複数の自治体で性的マイノリティ保護条例が否決されました。虐待や性被害などにあった女性を支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)」への妨害・中傷、公共トイレへの生理用品設置を訴えた三重県議・吉田あやか氏は約八〇〇〇件の殺害予告を受け、トランスジェンダー当事者の島本町議・河上りさ氏は誹謗中傷にさらされています。民主主義文学運動は、バックラッシュに抗い、あらゆる差別と人権侵害に反対します。民主主義は個人の尊厳、平等、自由な表現に基づく社会の基盤であり、文学はこれを守り育む力です。
 今日、性別、人種、民族、宗教、性的指向、障害、経済的地位などに基づく差別が、個人とコミュニティを分断し、民主主義の根幹を揺さぶっています。バックラッシュは、多様性や進歩的価値観を否定し、権威主義や排他主義を助長する動きとして、自由で公正な社会を脅かします。私たちは、文学を通じて抑圧と差別に立ち向かい、社会や組織の差別的構造を批判し、抑圧された声や周縁化された人々の物語を積極的に取り上げ、包摂的な社会のビジョンを提示します。
 人権と自由の擁護:すべての個人の基本的人権、表現の自由、自己決定権を尊重し、特に性暴力被害者の尊厳を守る物語を創造・共有します。
 民主主義の価値の強化:対話、寛容、公正を促進する作品を通じて、性暴力を含む人権侵害に対抗する民主的プロセスへの信頼と参加を鼓舞します。
 多様性の称揚:異なる背景、視点、経験を尊重し、性暴力被害者の多様な声を反映した文学を支持します。
 バックラッシュへの抵抗:性暴力や差別を助長する憎悪や偏見の言説に、言葉と想像力で対抗し、民主主義の危機に立ち向かいます。
 文学は、単なる物語や美の表現にとどまりません。それは、性暴力や差別といった抑圧を暴き、希望を灯し、行動を呼び起こす力です。民主主義文学運動は、すべての人が尊重され、参加できる社会を実現するために創作活動を発展させます。詩、小説、エッセイ、戯曲、評論などすべての文学形式を通じ、バックラッシュに屈せず、性暴力を含む差別と人権侵害を終わらせるために闘うことをよびかけます。



 二〇二五年五月十一日
日本民主主義文学会第三十一回大会  


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