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【決議】 「日本学術会議法案」の廃案と学問の自由と自律を求める | |
五月九日、衆議院内閣委員会で「日本学術会議法案」が可決され、本会議に送られました。 この法案は、現在の日本学術会議の変質を目的としています。法案では、現在の学術会議法を全面的に変え、学術会議を特殊法人とします。この法案が成立すれば、学術会議は総理大臣が任命する「監事」の監督下におかれ、会員の選出にも「選定助言委員会」という会員以外のメンバーが介入し、会の独立性、自律性が損なわれることになります。 二〇二〇年の学術会議の会員選出に当たって、当時の菅内閣はそれまでの国会答弁をふみにじって、学術会議の内部から推薦された候補者のうち六名の任命を拒否しました。推薦に基づいて任命するよう規定している日本学術会議法にそむく違法行為であるというだけでなく、人事の自律性への介入をおこなったのです。それをきっかけとして、政府与党は学術会議の変質をはかり、学術会議の国家機関としての独立性を否定し、政治や経済に奉仕するものへと変えようとしたのです。そこには、学術会議が数度にわたって軍事目的の研究をおこなわないという声明をあげてきたことを敵視し、学術研究を軍事目的に従属するものに変えようとする意図があります。 そもそも、日本学術会議が政府から独立した組織であることは、戦前の歴史からの痛苦の教訓に裏打ちされたものです。一九三三年、当時の京都帝国大学教授であった滝川幸辰は、その学説が政府に批判的であるという理由で大学を追われました。この事件が権力による小林多喜二虐殺と同じ年に起きたことは偶然ではありません。学問への干渉は文学への弾圧と並んで、その後の日本を本格的な侵略戦争へと進めるために企てられたものなのです。 プロレタリア文学運動の積極的遺産とともに日本文学の民主的伝統を引き継ぐ民主主義文学運動として、学問の自由を守ることの大切さは、文学の民主的な発展にとっても不可欠なことだと考えます。学問研究をふたたび国家の目的に従属させ、戦争協力の道具に陥らせることは許されません。 日本民主主義文学会第三十一回大会は大会の意志として、「日本学術会議法案」のすみやかな廃案を求めるとともに、学問を政治に従属させようとするあらゆる企てに反対し、学問の自由と自律を守るために全力をつくすことをここに表明します。 二〇二五年五月十一日
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