【決議】国語教育の動向に危惧し、文学教育の重要性をうったえる

 二〇二二年度から実施される高等学校の学習指導要領が告示された。そこでは、国語科に大きな変更が加えられている。「現代の国語」と「言語文化」を必修とし、そのうえに「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」を新設してこれを選択制とするものとなっている。

 この変更は、実用文を重視するという方向性にもとづくものであり、すでに「センター試験」に代わる「大学入学共通テスト」の試行問題においては、複数の情報からの読み取りを求める問題として、生徒会の規約や学校新聞、駐車場の契約書や自治体の広報などを問題文に組みこんだものが出題されている。

 この方向性は、高校に先行して実施される小学校や中学校の学習指導要領においても、「情報の扱い方」についての知識や技能の重視がうたわれており、その仕上げとしての高校教育の変化となるものである。ましてや、大学入試が「実用文を読み、情報処理の正確さ、速さを競うための」ものとなれば、高校はそれにあわせた国語授業を余儀なくされる。

 これは、言語活動を「情報」のレベルにとどめ、文学作品に触れる機会の疎外に結びつくものである。「文学国語」が履修されなくなれば、文学に対する意識や感受性を後退させ、ひいては言語のもつイメージを喚起させる力の喪失の結果を招くのではないかと危惧せざるを得ない。

 こうした懸念のなか、日本文藝家協会は声明を発表し、「この危惧すべき流れをよりよい方向に修正するため」一丸となって取り組み、「オープンに意見を交わすことのできる公開の場を設けて」いくことを呼びかけている。

 わたしたちは文学創造にたずさわるものとして、国語教育の動向に対して無関心でいることはできない。これからの社会における日本語や文学のありかたをめぐっての議論に、わたしたちは深くかかわっていくとともに、国語教育における文学の軽視が生じないように、広く働きかけていくことを、ここに決議する。
 
 二〇一九年五月十二日
日本民主主義文学会第二十八回大会  


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