【決議】 「テロ対策」名目で内心と言論の自由を奪う「共謀罪」法案を廃案にせよ

 安倍内閣は、通常国会に上程した「共謀罪」法案(テロ等準備罪)を、会期末の六月十八日までに強行通過・成立させようとしている。
 安倍首相は五月三日、二〇二〇年までに現憲法第九条を改定し新憲法を施行する意向を示し、「戦争できる国」の完成に突き進んでいる。「共謀罪」法案は、国民すべての内心を支配し、人権や平和を護ろうとする民衆の行動を抑圧する「現代の治安維持法」にほかならない。絶対主義的天皇制下、治安維持法により小林多喜二らの文学者が命を奪われ、獄につながれた歴史を想起するとき、わたしたちはけっしてこれを許すことができない。
 政府は、共謀罪法は「東京五輪を控えたテロ対策」に必要だと強調する。しかし、この間の法改正や判例の展開からすでにテロ対策に不足はない。
 また政府は、共謀罪創設は国際組織犯罪防止条約の締結のために必要であるという。しかし、国連の立法ガイドでも、各国は組織犯罪対策として国内法の基本原則に適合的な対処を求められているに過ぎず、共謀罪の創設は必須ではない。「テロ対策」「条約締結に必要」という政府の説明は、共謀罪創設の真の目的を覆い隠す名目に過ぎない。
 共謀罪は、まだ実行していない犯罪の「共謀」を処罰する。共謀の有無を調べるために、人の内心に公権力が土足で踏み込む危険は大きい。対象犯罪を直接実行する共謀のみならず、組織集団に資金提供等の目的で行う間接的関与の共謀まで処罰されることを考慮すると、国民の内心の自由・言論の自由が重大な脅威にさらされるのは必至である。ジャーナリストらが「捜査機関に際限のないフリーハンドが与えられ、監視社会が現実化する」として反対しているのも当然である。
 日本民主主義文学会第二十七回大会は、このような国民の内心の自由・言論の自由を奪う共謀罪法案の廃案を強く求めるものである。

  二〇一七年五月十四日
日本民主主義文学会第二十七回大会  


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