「労働者の現状と文学研究会」 (2008年9月)


   ハンドシェイク回路』に至るたたかいの描出
                    ― 田島 一の創造過程
 
 
 第三回「労働者の現状と文学を考える会」が、九月十九日に開かれました。テーマは「『ハンドシェイク回路』に至るたたかいの描出―田島一の創造過程」。報告は乙部宗徳氏が行いました。参加者は二十人。
 乙部氏は、「戦士たち」「遠景の森」「青の画面」「湾の篝火」などこれまでの田島一の作品世界にふれながら、彼の文学的モチーフが共産党員を描くことであること、描かれる党員像は職場の人間関係、党支部、家族など多角的な視点から形象されていることを解明。そのうえで、『ハンドシェイク回路』の新しさについて、職場の共産党員差別を打ち破った後の新しい状況下での党員たちのたたかいに焦点をしぼり、新しい状況下でみえてくる労働者の現実、党員たちの意識のずれ、新しいたたかいの展望をどう持つかなどにあると詳しく報告しました。
 作者の田島一氏も参加し、率直な作品評価もまじえて今日の労働現場を描くうえでの課題について様々な意見がだされました。

 「孤立した状況を打破したあとの党員たちのたたかいを労働者たちはよく見ている、そういうなかで主人公の沖元はよくたたかっているといえる。その党のたたかいのあり方に新しい問題を提起している。沖元の葛藤のなかに萌芽がある」「沖元がなぜ開発の最前線のプロジェクトに配置されたのか。その背景にある会社の労働者攻撃の実態、会社側の意図などが十分描かれているとはいえない」「技術者としてのものをつくる喜び。それを感じられる職場づくりのなかで労働者の心をつかんでいくたたかいは大事な視点だ」など多様な意見が出されました。
 
 
  (牛久保建男)    

「労働者の現状と文学研究会」に戻る