「労働者の現状と文学研究会」 (2008年3月)


   19年の取材でトヨタの実像に迫る
    ― 『トヨタ世界一の光と影』の取材の中で
 
 
 3月21日、文学会事務所で2回目の労働者の現状と文学を考える会が開かれ、12名が参加した。今回は『トヨタ世界一の光と影』(いそっぷ社刊)を刊行された岡清彦を招いてお話を聞いた。岡氏は1945年生まれ、日立製作所勤務を経て「しんぶん赤旗」編集局に入局、大企業や労働運動、古代史などを取材しつづけながらこのほど19年間の取材を経て『トヨタ世界一の光と影』を刊行したのだった。その本の帯には《私は毎年、欠かさず豊田市へ取材にいった。/“三河の田舎企業”と揶揄されたこともあるトヨタが、なぜ世界一になったのか? 19年間の結論はこうである、 一切のムダをはぶくかんばん方式で世界を席巻した。世界でも例のない労使協調主義、“労使宣言”路線に労組を組み込んだ》とある。
 岡氏は、なぜトヨタ自動車を取材したのかといえば「トヨタを知らずして資本主義はわからない」ということが原点にあったと語りながら、上記2点の特質を解明した。秒単位の生産、余裕時間なしの非人間的労働、相次ぐ過労死など労働者がいかに過酷な状況に追い込まれていったか。そして労働者はそれとどうたたかってきたか。そのひとつとして、過労死裁判で初めて実名でトヨタ自動車を告発した内野博子さんのたたかいを紹介、夫の死(当時30歳)からほぼ6年、時に挫けそうになりながらも過労死裁判勝訴が確定したのは2007年12月であった。この間取材し続けてきた岡氏はたたかいの中で人は強く優しく美しく成長していくものとの思いをいっそう強くした、と話した。そして『民主文学』(08年)4月号の座談会に触れてこれほど非正規雇用労働者の問題が吹き出ているとき、われわれは徹底した取材をもとに記録文学にも積極的に挑戦していくことが大事ではないかと指摘した。
 
  (宮寺清一)     

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