第二十七回「東京文学研究集会」が十月二十九日(日)、板橋区立グリーンホールで開かれた。午前は岩渕剛氏が「関東大震災から一00年とプロレタリア文学」をテーマに講演。午後は四分科会に分かれ各支部から提出された十一作品を合評した。参加者は四十七人だった。
冒頭、仙洞田一彦実行委員長は「今回は当初、提出作品が例年より少なく心配した。残念ながら筆力が低下しているのではないか。激動の事態で『書くべきこと』は多い。集会を契機に筆力をさらに磨いて欲しい」とあいさつした。
岩渕氏は、自警団らによる在日朝鮮人、社会主義者への暴力、虐殺など「関東大震災は単なる自然災害ではなく『人災』の側面も大きかった」と強調。田山花袋、芥川龍之介、徳田秋声ら文壇作家だけでなく、越中谷利一、宮本百合子、平林たい子などプロレタリア文学作家が、厳しい当局の検閲をくぐって事実を後世に伝えようとしていたことを紹介した。特に越中谷利一は自らの従軍体験から兵士たちの「後ろめたさ」(贖罪意識)や、自警団に参加した市民の意識を活写していたことに触れた(「一兵卒の震災手記」)。
「殺された朝鮮人ら、自警団に加わった人、一人一人の生きる姿をきちんと見つめて描ききることが、社会と人間の真実を追求する文学につながる」と述べた。
合評された作品は次の通り。
▽「このままで死ねるか」(保坂和夫、東京東部支部)▽「家庭教師」(小川京子、杉並支部)▽「ちいさな水槽」(中田良一、野火の会支部)▽「秘薬」(馬場ひさ子、渋谷支部)▽「ある日の句会」(藤原一太、滔々の会支部)▽俳句の評論2題(夢前川広、同)▽「お客さん」(田村光雄、板橋支部)▽「モノレールの見える部屋」(笠松としこ、多摩東支部)▽「五の煎餅」(國府方健、電機ペンの会支部)▽「まだつかめない星」(森本けいこ、代々木支部)▽「ユメヲイビト―性懲りもなく―」(石川倫太郎、東京南部支部)。
(夢前川広)
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