2023年 各地の文学研究集会
 九州文学研究集会開催  

 十月二十二日(日)に宗像市の公共施設「メイトム」において、九州文学研究集会を開催しました。当初はまだコロナ感染がじわじわと広がっている問題もあり、これ迄の一泊二日の計画ではなく途中いつでも中止できる選択肢があることを覚悟して一日だけのミニ研究集会を計画しました。

 講師は大牟田の佐田暢子氏。
 1泊2日の計画の場合は、昼から始めて翌日の昼までという計画でしたが、日帰りだと朝が早いですが朝九時から始めて十七時迄としました。今回は九州の北半分だけが集まりました。熊本や宮崎の方にも案内状は出して電話もかけて案内しましたが、大分・長崎・佐賀・北九州・福岡の会員で講師を含め二十三名の参加でした。

 幸い、計画は延期や中止の判断をすることなく予定通りに実施することが出来、喜ばれて安心しました。
 朝が早いので遅れた方も出て開会を十五分遅らせ開会後、福岡支部長の挨拶と講師紹介、参加者の紹介は各支部長からして頂きました。

 佐田講師の講演は『切実なことを小説として書く』で、福岡・佐賀・長崎と新しく出来た支部の多い北部九州の参加者には、とても有意義な講演だったと思います。

 作品は七作品を合評し、文学会事務局から送って頂いた組織部会の報告も、来年研究集会の計画を話しあう前に二十五分取って佐賀支部の山下さんが全文読んでくれた後、福岡支部の堤さんの発言もあり皆さんに報告しました。遠くからの方がおられるので集合写真は昼食前に取り、終了は十六時五十分にして十七時を厳守して無事に終わりました。
                            (黒原寅実)




  北信越文学研究集会 in 上田 開催  
 秋の青空のもと、十月二十二、二十三日に石川・富山・新潟・長野の四県六支部から仲間が上田の地に集って、文学研究集会が行われました。講師・会員外の地元参加者を含め二日間で三十五名の参加がありました。

 一日目は、「小林多喜二『党生活者』を今読み直す―ジェンダーの視点も加味して―」と題した宮本阿伎さんによる文芸講演会。十五枚にも及ぶレジュメ(資料)を基に、日本が侵略戦争を開始した暗黒の時代、戦争反対と臨時工の解雇撤回の闘いに命を賭して立ち向かう若き日本共産党員の姿を描いた「党生活者」について熱く語られました。「今日の政治情勢からみて極めて意義があった」「もう一度じっくり読み直してみたいと思った」などの感想が寄せられています。多喜二虐殺の後、「血の滲む絶作」として大きく取り上げられた当時の中央公論の広告が追加資料として出され、感動を呼びました。

 続いて、長野支部「電子黒板のある風景」(浅川詠子作)、松本支部「ポインセチアの赤い花」(福嶋活水作)、新潟支部「レッドクロスの誓い」(机文明作)の三作品についての合評会が行われ、温かい評価と共に今後の作品作りに繋がるような厳しい意見も遠慮なく出されました。

 会場を移動しての夕食交流会も、飲んで食べて語って、盛り上がりました。
二日目は、富山支部「山の家」(青澤直樹作)、上田支部「飛べ ペンギン烏」(水坂結衣作)、けんろく支部「夏 過ぎて」(新木伸秋作)の三作品について合評が行われました。前日に続いて、「いい作品だ」「いや、そうは思わない」など賛否両論の評価が交錯し、時間いっぱい活発な議論が続きました。

 最後に、支部ごとに現状や課題を出し合いました。「例会を毎月行って互いに研鑽し合い、支部誌に繋げている」「支部ニュースの発行で会員相互を繋げている」「会員個人の本を支部が援助して出版した」「会員や読者を増やした」「常任幹事会の援助も得て体制を立て直した」「北信越の集会に作品をもって参加することができた」など、各支部の奮闘がわかり、今後の前進の力になったように思います。

 北信越の仲間が集ったからこそ、支部活動だけでは味わえない学びができました。講師派遣や費用の面で多大な援助をしていただいた常任幹事会にも感謝申し上げます。
                                      (水坂結衣)


   東京文学研究集会開催  


 第二十七回「東京文学研究集会」が十月二十九日(日)、板橋区立グリーンホールで開かれた。午前は岩渕剛氏が「関東大震災から一00年とプロレタリア文学」をテーマに講演。午後は四分科会に分かれ各支部から提出された十一作品を合評した。参加者は四十七人だった。

 冒頭、仙洞田一彦実行委員長は「今回は当初、提出作品が例年より少なく心配した。残念ながら筆力が低下しているのではないか。激動の事態で『書くべきこと』は多い。集会を契機に筆力をさらに磨いて欲しい」とあいさつした。

 岩渕氏は、自警団らによる在日朝鮮人、社会主義者への暴力、虐殺など「関東大震災は単なる自然災害ではなく『人災』の側面も大きかった」と強調。田山花袋、芥川龍之介、徳田秋声ら文壇作家だけでなく、越中谷利一、宮本百合子、平林たい子などプロレタリア文学作家が、厳しい当局の検閲をくぐって事実を後世に伝えようとしていたことを紹介した。特に越中谷利一は自らの従軍体験から兵士たちの「後ろめたさ」(贖罪意識)や、自警団に参加した市民の意識を活写していたことに触れた(「一兵卒の震災手記」)。

 「殺された朝鮮人ら、自警団に加わった人、一人一人の生きる姿をきちんと見つめて描ききることが、社会と人間の真実を追求する文学につながる」と述べた。

 合評された作品は次の通り。

▽「このままで死ねるか」(保坂和夫、東京東部支部)▽「家庭教師」(小川京子、杉並支部)▽「ちいさな水槽」(中田良一、野火の会支部)▽「秘薬」(馬場ひさ子、渋谷支部)▽「ある日の句会」(藤原一太、滔々の会支部)▽俳句の評論2題(夢前川広、同)▽「お客さん」(田村光雄、板橋支部)▽「モノレールの見える部屋」(笠松としこ、多摩東支部)▽「五の煎餅」(國府方健、電機ペンの会支部)▽「まだつかめない星」(森本けいこ、代々木支部)▽「ユメヲイビト―性懲りもなく―」(石川倫太郎、東京南部支部)。

                       (夢前川広)


  東海地方文学研究集会(オンラインで開催)    

 第三十五回東海文学研究集会が十一月四日(土)十一時より十六時半までオンラインで開催されました。参加は岐阜、浜松、名古屋の三支部と講師含め合計十七名でした。

 講師は文学会常任幹事の笹本敦史氏。研究集会での講師は初めてとのことでしたが、読書体験や創作体験を具体的にかつ率直に語っていただき、興味深く聴くことができました。とくに学生時代は映画研究部に所属し、八ミリで自主制作映画も作られたとのこと。質疑では、ベストワンの映画は何かと問われ、間髪を入れずに「ローマの休日」と答えられたことも印象に残りました。小説を書くことについても、表現にどう知恵をしぼるか、そのヒントのいくつかを教えていただきました。

 合評作品は、@青木重人「初めての体操」(岐阜支部)報告は矢ノ下マリ子、A井村幸広「有馬温泉」(浜松支部)報告は丹羽あさみ、B石川久「決壊」(名古屋支部)報告は井村幸広の三作品。参加者全員が活発に発言しました。作品のテーマから細かな文章表現まで、中には厳しい意見も出ましたが、作者も参加者もそれらを糧として各自の力量アップにつなげていけたらと思います。最後に、笹本氏から合評会の総評、及び文学会からの組織課題の訴えがあり閉会しました。
                                    
                                  (鬼頭洋一)
  中国地区研究集会   

 十一月十八日(土)〜十九日(日)岡山市北区のオルガ会議室にて中国地区研究集会を開催した。講師は風見梢太郎常幹。山口三名、呉二名、岡山八名が参加した。

 二〇一九年の岡山開催を最後に、コロナ禍のために三年間開催できなかった。そのなかでも岡山はコツコツと会員の拡大に努め、山口も支部誌の発行を続けてきたが、他県は困難な状況を迎えつつあった。

 今回、山口支部からの熱心な働きかけもあって、岡山支部が主体となって中国地区全支部に呼び掛けた。その結果、鳥取は家庭の事情などで不参加となったが、呉支部は中心メンバーが動いて、二一年の支部誌を引っ提げての登場となった。なお、この機会に二三年支部誌も発行できた。

 岡山支部はコロナ下で参加してきた新しい会員三名を初めて中国地区集会に迎えることができた。元からのメンバーは、四年ぶりの懐かしい顔との再会を喜んだ。

 今回はできるだけ参加者全員の作品を合評することにした。全員が自分の作品を批評してもらえるという良い点もあったが、作品あたりの批評時間が限られること、読んで来るのが大変という問題もあり、今後の検討課題となった。

 夜は居酒屋をはしごして、大いに飲みかつ語った。初めての参加者にもたいへん喜んでもらえた。
 講師からも、豊富な経験にもとづく貴重なお話をたくさん聞かせていただいた。
 来年は呉支部が主催して、もっと大勢の人を集めようということを約束して散会した。
 大成功であった。
                                   (石崎徹)
   埼玉県第29回研究集会   
 
県内四支部が集まっての研究集会が十一月二十五日、さいたま文学館で開催され十七人が参加しました。

井辺一平県連代表の開会挨拶のあと参加者が自己紹介。
橘あおいさん(民主文学会常任幹事)が「創造問題を考える、強味を生かして弱点を克服する」の演題で講演。『民主文学』作品の特徴としていわれる「自分の経験を書いたものが多い」「過去の話が多い」などを踏まえ、かつての全国大会で指摘されたことを紹介。@個別的な体験を普遍化する、A人間を画一的にとらえず、意識や心情に矛盾を抱えた生きた人間として描く、B出来事を書くだけでは新聞記事と同じ、人間とその生活を描く、C文学は言葉による表現、テーマだけ論じるのでなく表現には注意をはらって読む。これらはいまでもわたしたちの課題になっていると思いました。
 さらに橘さんは小林多喜二が後輩の書き手に、現場から離れない、仲間と文学サークルを作ってものを見る眼を広げ、文化的仕事をすることを助言していることを紹介。仲間との議論で自分自身を高めていくことは、まさに民主文学が果たしている役目です。

 各支部からの提出作品を合評。
西北支部の笠原武さんの「父(てて)なし子」を山本芳一さん(東部支部)が報告。問題を起こすことが多い母子家庭の中学生。教師の主人公は温かく接するが、その子が同級生の娘が好きだと聞くと、娘だけでなく相手の親も大事にするように諭す。十年後、かつての「問題児」からあの娘と結婚することになったとうれしい便りが届く。

 東部支部の柴山典子さんの「雪だるま」は古澤喬二さん(県南支部)が報告。主人公は庄内地方の富農の家に生まれ、家を継いでいまは孫もいる。雪を見ながら、まだ幼かったときの苦い出来事を思い出す。自分より十歳上の中学を出たばかりの使用人に生意気な態度をとってしまったのだ。主人公は高校、大学とすすむなかで、なぜ社会には家による格差、男女による差別があるのか考えるようになる。

 県南支部は、初めて作品を書いた古澤喬二さん「姉の部屋」、江本六郎さん「あの頃」の二作品、それに井辺さんの掌編「赤い架線」をまとめて合評。報告の田手川亘さん(西北支部)は、「あの頃」を中心に報告。「姉の部屋」は、大学卒業を間近にした主人公と、教員をしている姉との会話。「あの頃」は、学生運動の仲間だった二人が、一人は教員をしながらいまも運動を続け、もう一人は会社勤めで活動から離れている。社会に出てからの生き方が対照的になっている話。
 それぞれの作品の読みどころ、物足りない点などを出し合いました。

 支部の状況では、毎月十人以上の参加で例会を開いている東部支部、これまでのメンバーは健康状態から参加できなくなったが、新しい仲間を迎えて例会をひらいている南部支部、人数は少ないが活動を続けている西北支部、二人になってしまい開店休業状態の西部支部。

 そのあと橘さんから常任幹事会からの訴えがあり、県連事務局長の大石敏和さんが「来年は県連30周年、仲間を増やしながら記念行事を成功させよう」と閉会挨拶しました。
 個人的には、支部が休業状態なこともあり、久しぶりに文学をたっぷり語り合えて有意義な一日でした。                                                                                               (川村俊雄)